企業に求められる対応

 多用なセクシャリティを持つ人達を受け入れることができる社会づくりが、現在注目を集めています。行政では既に取り組みが始まっており、外国では同性同士の結婚や差別禁止などの制度作りが進められています。日本でも東京渋谷区のパートナーシップ条例など、徐々にではあるものの対応が行われつつあります。

 行政だけではなく、企業にもLGBTへの対応が求められるようになってきました。社内セミナー等を行うことによってLGBTに対する誤解や偏見を取り除き、理解を深めるよう動き始めているのです。この他にも専用の窓口を設置したり、採用活動時に配慮を行うなど、様々な取り組みがなされています。

 ではなぜ、このような取り組みがにわかに注目を集めるようになったのでしょうか。メディアによってLGBTの存在が広く知られるようになったことがまず背景として挙げられます。グローバル化に従い、人権問題への配慮が必要だと言う意識が高まったことも理由の1つでしょう。

 更に日本独自の理由も存在します。長く日本が続けてきた大量生産大量消費の時代が終焉を迎え、必要なものやサービスだけを効率的に提供する超スマート社会が到来しています。これによって、企業は多種多様な価値観や能力を持つ人材を必要とするようになり、LGBTの人達が持つ多様性は、企業にとって新たなイノベーション創出のきっかけとなり得ると考えられるようになったのです。

 更に少子高齢化が進むにつれ労働人口の減少が問題となっている日本では、企業にとって人材獲得が死活問題となっています。LGBTに対する取り組みを行うことで人材獲得に向けたアピールを行いたいと考える企業が増えているのです。

多様性を認める社会へ

 日本企業によるlgbtへの取り組みには課題もあります。第一の課題は、企業の利益のためという目的が突出することによって、基本的人権の尊重という本来最も重要となる視点が薄くなりがちであるという点です。更に取り組みが必要であると多くの企業が認識している反面、実際に取り組みを行っている企業がまだ少数にとどまっていることも大きな課題となっています。

 多様性を受け入れることができる企業の存在は、多様性を受け入れることができる社会の基盤ともなり得ます。各社の取り組みはそのまま人権に対する意識を表しているとも言えます。そういった意味では、企業の取り組みはLGBTの人達だけにとどまらず、消費者やそこで働く従業員にとっても重要な指針となっていくかもしれません。