全国で同性パートナーシップ制度を導入する自治体が増えるなか、LGBTに寄り添った視点で会社運営に取り組む企業が次々と登場しています。たとえば、求人案内でLGBTに配慮する制度やルールがあることを伝える企業が増えると、LGBT当事者は安心してその企業を目指し、採用試験に臨むことができるようになります。

 本人のセクシュアリティによる職場での不当な差別を禁止すると企業が表明すれば、会社の風通しを良くすることができ、社員の会社に対する信頼や仕事へのモチベーションを高めるのにも役立ちます。ダイバーシティすなわち多様性を広く受け止める企業運営をすることは、LGBT当事者はもちろん非当事者の働き方を含めた社員全員のサポートにもつながるテーマです。

 ここでは、実際にLGBTにフレンドリーな企業がどのような取り組みをしているのか見ていきましょう。

LGBTに関する研修・セミナーを開く

 LGBTという言葉は普及してきましたが、具体的な知識を持っている社員は少ない可能性があります。そこで、社内でLGBTに関する知識や自社の運営方針を理解してもらう基礎研修をおこなう企業が増えています。

 社内の人事部にLGBTを含めたダイバーシティ担当者を置く、社外講師を招いてセミナーを開催するなど企業によってさまざまな対応が見られます。研修やセミナー内容も全社員向けをはじめ採用や評価に関わる人事部向け、企業の重要な決定権を持つ経営陣向けなど対象者によって異なる場合もあります。

 まずLGBTとは何か、研修やセミナーを通して基礎的な知識を会社全体で共有することが第一歩です。つづいてLGBT当事者に対してどう向き合うのか、企業として採用や人事でどう評価や配慮をしていくのかなど、多様な視点から柔軟に対応できるフレンドリー企業としての社内環境づくりを目指していくことになります。

施設や制度を整備する

 LGBTに関する知識を共有した後は、会社としてダイバーシティのルールづくりや環境整備をおこなうことが必要です。フレンドリー企業としての具体的な行動には大きく分けて次の3つがあります。

■施設整備
・多目的トイレを設置して、性別やセクシュアリティに関係なく誰でも入れるようにする
・社員のセクシュアリティに応じた服装や頭髪での勤務を認めたり通称名で呼ぶようにする
・社内にダイバーシティの相談窓口や担当者を設置する

■制度整備
・社内規定のなかにLGBTや性的指向性に関するセクシュアリティ規定を追記して差別を禁止し、人権への配慮をする
・同性パートナーにも配偶者同様の福利厚生や手当を保障する
・性別適合手術や性ホルモン注射による入院や通院に対する有給休暇制度を導入する

■社外活動
・東京レインボープライドなどLGBT関連のイベントに参加する
・社内商品のダイバーシティ対応を推進する
・店舗にレインボーステッカーを掲示する

 このように社内の環境整備を推進しつつ、LGBTの取り組みを社外に知ってもらう活動を合わせておこなうことで、LGBT当事者の社員が自社に誇りを持って働けるような企業へと変化していくことができます。

≪まとめ≫

 LGBTであることは社員の個性であると認め、LGBT当事者も非当事者も働きやすい社内環境を目指すことがこれからの企業には求められています。社内ルールを作成し、制度を整備するのはもちろん、企業としてダイバーシティへの取り組みを推進しているとアピールすることでLGBTフレンドリー企業の存在が社会を少しずつ変えていくきっかけにつながっていきます。